本と砂糖壺

本と散歩と、あれこれ

本屋大賞ノミネート作品を読む! ①

 2019年本屋大賞ノミネート作品を読む! ①ということで、たぶん②③と続く予定です。よろしくお願いします。

 一作目は、『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ 文芸春秋)

 

 主人公は森宮優子17歳。3歳になる少し前に母親が交通事故で亡くなり、父親に育てられるも小学校4年生で別離。父親の再婚相手で今はもう別れている「義母」に引き取られることに。その後も親と呼ぶ人は次から次へと変わり(いずれも血はつながっておらず)、現在は「森宮さん」と二人暮らしです。

 

 父親が3人、母親が2人、苗字は4回変わるという数奇な運命を背負って生きてきたわけですが、全然不幸ではないという優子の言葉に、「ウソでしょ!」とツッコミを入れたくなります。実際、設定にかなり無理がある気がして、最初はどうにもこうにも物語に入り込めなかったのですが、後半になるにしたがって、あり得なさそうな設定に、むしろ引き込まれているのに気が付きました。「もしかして、この小説、いいかもしれない・・・」

 

 中でも物語を面白くさせているのは、三人目の父親「森宮さん」。一流企業のエリート社員の「森宮さん」は、真面目で理解のある父親かと思いきや、実はトンチンカンで不器用で、父親というより少し年上の(36歳)変わり者の大人なのだけれども、「父親」らしくあろうとする様子がコミカルに描かれています。コミカルだけれども一生懸命なのがすごくいい。

 「森宮さん」だけでなく、この物語に出てくる大人たちがみな、優子のためにそれぞれのやり方で愛情をかけている。そうして大人たちの間をリレーされ、素直に順調に成長した「優子」こそ、このリレーにおける「バトン」なのだなあと、これまた途中から気が付きました。出来過ぎだ、ありえないという感想は変わらないけれど、小説なんだからあり得ない設定でもいいじゃないかとも思えるようになりました。

 ラストもなかなか良いです。まあ、こうなるだろうなあと想像できるラストですが。性善説のうえに成り立っている物語世界だと思います。それもまたよし。

 

 瀬尾まいこさんの作品は、他には『あとすこし、もう少し』を読んだことがあります。こちらは駅伝大会に挑む中学生の話。デコボコチームが本番に向けてどうまとまっていくか。中学生に読ませたい良書という感じ。それもそのはず、瀬尾さんは、学校の先生をしていたこともあり、物語の中になんとなく「教員目線」があるのです。だからでしょうか、この本は学校の先生には評価が高いのですが、私は実はあまり・・・。面白みに欠けるというか・・・ それに比べると、このあり得なさそうな設定の今回の作品は、面白かったし、引き込まれました。

 本屋大賞、どうなるでしょうね? 他のノミネート作品も読んでみます!

 

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